路傍の晶
ファッションカーテンのDECO 店主 佐々木さん
さらに、このとき導いた持論が、佐々木さんにはある。
「人間は感動するとき、頭では考えていません。感動は頭で理解するものではなく、五感に訴えられて感覚的に捉えるもの。その際の心の動き、リズムは、じつはカーテンのウェーブと一緒なんです。ひとの感情も、平常心でいるときは一定に保たれますが、感動すると波打つでしょう。おなじように、手作りのカーテンが生み出す波紋と見るひとの心が同調したとき、感動が生まれる。カーテンは心の商品なんです」
佐々木さんは元来、職人である。それまではこだわりを堅持し、仕事を選び、技術の向上に喜びを感じていた。いうなれば、内なる追求である。そこに「手に取るひとに感動を与えたい」という外に向かう新たなモチベーションが加わったわけだ。ひとの心を動かす芸術作品がそうであるように、縫製業もまた、手作業の賜物である。「職人として磨いた技術を生かし、綺麗で、ハートに訴えるカーテン作りを目指そう」23歳で室内縫製業に身を置いて以来、こたえを導くまでに10年あまりが経過していた。
「DECO」は、そんな自身の思いを体現するために立ち上げたショップである。計算し尽くされた大小のウェーブは美しく、見る者の心を揺さぶる。「毎日のカーテンの開け閉めが楽しみ」「我が家ではカーテンが一番愛されている」等々、利用者の評判は上々だ。
「掛けて楽しくなる品をお奨めしています。いうなれば、“幸せのカーテン”ですよ」照れ笑いを浮かべる佐々木さんは、初めてミシンを踏んでから30余年、たくさんの幸せを紡いでいた。
取材・文◎隈元大吾