路傍の晶
指圧・玉川岩盤浴 マッサージルーム ポピンズ 院長 鈴鹿さん
ほかではあまりお目にかかることのできないマッサージルーム「ポピンズ」独自の設備は、扉をくぐり、奥の階段を上った2階の一室にある。それは、“岩盤浴”だ。
「当初は『岩盤浴』という言葉すら知らなかったんですが……」鈴鹿さんは、照れ笑いを浮かべながら振り返る。
「たまたまその言葉を知って興味が湧き、いろいろ調べたんです。その際に自然治癒力の向上をはじめとする岩盤浴の効能を知り、マッサージと併用すればマッサージ効果もより高まるのではないかと考えました」
さらに調べていくうちに、秋田県の玉川温泉が有名だということを鈴鹿さんは知った。湯治場として人気が高く、効能も幅広く伝えられている。ただし、玉川温泉の北投石は国の天然記念物だ。岩盤浴のための設備をつくりたいからといって、勝手に採取することはできない。それでも、「なにか方法はないだろうか」と調べぬいた末に見つけたのが、人工の石だった。
「玉川温泉の湯の花を使って人工的につくった石があることを知りました。それを仕入れて、ベッドの下に敷くことによって、うちでも玉川温泉の岩盤浴と同様の効果を得られるようになったんです」
この石との出合いが、東京の下町に秋田の岩盤浴を再現させた。現在のようなブームに火がつくよりもまえの、昨年4月のことである。
この岩盤浴を目的に来る人々をはじめ、ポピンズを訪れる利用者の症状はさまざまだ。
「仕事帰りの方や、お年寄りも多いですね。肩こりや腰痛、足腰の痛み、また長時間パソコンを使う方には、眼精疲労や頭痛も多々見受けられます。マッサージが主ですが、痛みが激しい場合は針灸で治します」
利用者のほとんどがリピーターである。ただ一方で、「できればもっとたくさんのひとに来ていただきたいですね」と、鈴鹿さんは言う。
「うちの岩盤浴はまだまだ知られていないと思いますから、一度、体験していただけたらと思います。もちろん岩盤浴だけでなく、マルマテラピーという足もみ療法や腰の負担を和らげるリフォーマベルトなど、いろんな症例にも対応できますので」
この業界に入って丸10年になる。船堀にポピンズを立ち上げてからは、8年が経った。その間、数え切れないほど多くの患者と接し、あらゆる症状と向き合ってきた。
「治療が終わって、患者さんに『楽になった』とか『痛みが取れた』と言っていただけると、ほんとうにうれしいです」
リピーターは、東京の下町に隠れている玉川温泉の岩盤浴の物珍しさに集まっているのではない。鈴鹿さんの治療が、「また来たい」と利用者に思わせているのだ。
取材・文◎隈元大吾