路傍の晶
整体&リラクゼーション A-balance 守屋さん
得意先の大手量販店を巡り、夏冬の繁忙期には売り場のフロアに立って販売を手伝うなど、稼ぎ頭の日常に満足な休息はない。おまけに若いころから腰痛を抱えていた守屋さんの肉体が悲鳴を上げることは少なくなかった。そんな彼が仕事の合間を見つけては駆け込んでいたのが、整体や針灸、クイックマッサージといった治療院だった。
しかし、さまざまな施術を受けるうちに、ある違和感が彼のなかに生じてくる。
「いろんな店で治療してもらいましたが、“私のために”一生懸命やってくれるところはないなと感じました。どこもマニュアルに沿うように通り一遍の施術、つまり誰に対しても同じやり方で、人によって変えることをしない。でも体は人それぞれ違いますからね。そこで体を癒す現在の仕事に興味を持つようになり、もしも自分がやるのであれば、利用者の方それぞれに合わせた施術をしたいと思った。そう考えるようになったのがはじまりです」
決意してからの行動は早かった。50歳を目前に控え、「動くなら年齢的にこれが最後」と腹を括り、およそ四半世紀勤めた会社を辞す。マッサージの専門学校に通い、店で実務をこなしながら、さらに技術の幅を広げるべく整体院でカイロプラクティックを学んだ。このとき出合ったのが、「アクティベーター」と呼ばれる骨格矯正器具である。
「ボキボキ音を鳴らす骨格矯正は怖がるひとが多い。でもアクティベーターを使うとそういった不安もなく、安全で適確に骨格を矯正できます」
小岩に「A-balance」を構えて2年半が経つ。店舗が道路に面しているのは、足や腰の治療に訪れる利用者を配慮してのことだ。客足は近隣住民を中心にゆっくりと伸びている。
「いまの仕事は、知識と技術に長けることが基本になければならないが、サービス業であり接客業でもある」と、守屋さんは言う。
「つまり体を癒すことがサービス業、またお客様とじかに接する点で接客業ともいえる。その意味では、営業の経験が活きています。これからもコミュニケーションを大事にして、まずは『小岩で一番』といわれる店にしたい。少しずつ地域に浸透させていきたいですね」
かつて利用者の立場で抱いていた思いを、いまは経営者として反映させている。そして利用者との信頼関係をもっとも大切にする姿勢も、営業マン時代のそれに等しい。その姿勢をもって、会社ではトップまで上りつめた。第二の人生もまたじっくりと時間をかけ、頂上を目指す。
取材・文◎隈元大吾