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下町酒場はしご酒~江戸川のディープな居酒屋巡り

池波和彦のまいぷれ江戸川区・秋の酒の肴

自然の恵みを味わう秋

秋の酒、秋の味。

日本酒がしみじみとうまくなるのは、やはり秋であろう。

春に生まれた新酒はひと夏を静かに眠って味を育て、この頃になると角が取れて香りも旨味もふくらみを増す。これを「秋あがり」と呼び、十月一日が「日本酒の日」と定められているのも、まさに飲み頃を迎える季節だからである。

秋は実りの季節でもあり、海では魚が脂を蓄え、山には木の実や茸が姿を見せる。

皮目をさっと炙った戻り鰹は、火で溶けた脂の香ばしさが身の旨味を引き立てて酒を誘う。そして秋を最も感じさせる魚といえば、その名のとおり魚偏に秋と書く秋刀魚であろう。

まずは塩焼きがよく、皮の下で脂が音を立てる腹のわたにはほろ苦さが宿る。この苦味こそ秋刀魚の味であり、近ごろは刺身や酢締めも見かけるようになったものの、炭火で焼き上げた一尾にはやはりかなわない。

畑では茄子がうまくなり、焼けば香ばしくとろりと甘く、煮ればだしを吸い、味噌と合わせれば飯も酒も進む。漬物になれば箸休めにもなる、実に懐の深い野菜である。

山の恵みでは茸が待ち遠しい。香りの王者と言われる松茸も、産地にこだわることはなく、それより土地ごとに名を持つ地茸にこそ、その土地ならではの香りと味わいがある。この季節に欠かせない舞茸も、汁にしても焼いても、炊き込み飯にしても実によい。

そして、殻ごと炙って割れば翡翠色の実が顔をのぞかせる銀杏である。指先にほんの少し塩をつけ、そのまま口へ運んでは熱さに手を振って頬張る、その何気ない仕草にこそ秋の風情がある。

酒はもちろん燗がよく、秋あがりをゆるりと温め、盃から立つ湯気に秋の夜気が混じればそれだけで心がほどけていく。

昔の人は「林間に酒を温めて、紅葉を焼く」と詠んだそうだが、酒を温める火の向こうに紅葉を眺める、そんな情景が目に浮かぶようである。

秋は酒も、魚も、野菜もうまい。

急ぐことはないのだから、暖簾をくぐって燗酒を一本たのみ、その日の恵みを少しずつ口へ運ぶ。季節を味わうとは、案外そういうことなのかもしれない。

↑秋の王様は松茸。八戸の割烹で

↑秋は秋刀魚がうまい。館山の酒場で

↑秋はキノコ鍋がうまい。松本の居酒屋で

↑秋の〆はキノコのおじや。東京都杉並区の居酒屋で

◆この記事を書いたひと

酒場ライター:居酒屋伝道師・池波和彦

 

東京生まれ東京育ち。酒場巡りを趣味とし、北は北海道の離島から南は沖縄の離島まで新規10000軒以上の店を巡りブログ「日本の酒場をゆく」を執筆。毎夜全国の居酒屋やバーにて神出鬼没の酒戦の日々を過ごす痛飲派。

 

ブログ「日本の酒場をゆく」↓

https://ameblo.jp/m458itmasa/

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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