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下町酒場はしご酒~江戸川のディープな居酒屋巡り

ひとりで、江戸川の居酒屋へ 池波和彦のまいぷれ江戸川区・魅惑の下町酒場【番外編】

夜の帳が下りる頃、良き酒場を求め、江戸川区を巡る

東京湾、葛西臨海公園の葛西渚橋を渡り葛西海浜公園に立つと強い潮風がコートを翻し、髪を乱された。
水面は大きく波立ち、ぎゃあぎゃあとカモメが飛び交い、遠くに東京ディズニーランドが見える。
ここは海だ。

そして舞浜大橋がまたぐ、旧江戸川が東京都と千葉県を分けて流れる、旧江戸川の河口でもある。

午後の公園は女子高生たちが弁当をひろげ屈託がない。
しばらくそれを眺め首都高速湾岸線をくぐり、環七通りを歩いた。
環七通りは山手線の外側をぐるりとまわる環状線だ。
殺風景な団地の風景をしばらく歩いてゆくと、葛西駅に着いた。
さて居酒屋だ。
北上してきた環七に沿い、こんどは居酒屋をたどりながら江戸川区を巡ってゆこう。

東京メトロ東西線葛西駅からぶらぶら10分ほど歩くと、馬頭公園近くの住宅地に居酒屋(信濃路)がある。

起点は葛西の居酒屋(信濃路)だ。

「いらっしゃい」
二代目が迎えてくれた。
渋く落ち着いた二代目は料理人として脂の乗った雰囲気だ。
料理は、山かけ、天ぷら盛合せ、だし巻玉子はじめ、本日のおすすめは刺身三点盛、タイかぶと焼ともっぱら和食。
挨拶代わりの刺身三点盛は、マグロ、タイ、タコが登場した。
この日の一押しであるマグロをいただくと、申し分ない脂ののり。
さて真打ち。
最初から目をつけていた「タイかぶと焼」は、豊潤なうまみがたまらない。
二代目を交えた客同士の会話も(信濃路)ならではの魅力。
住宅地の片隅で営業するにはもったいない、うまい肴に心酔いできる一軒だった。

店を出てタクシーから眺める夜の江戸川の町は、点々と続く街灯が夢幻世界へと導くようだ。

新川を渡ると別世界に入ってゆく期待感がある。

その先の一之江といえばその名も高き(大衆酒場カネス)だ。

東京の一番東、一之江にある(大衆酒場カネス)には下町の真髄が残っている。
場所は都営新宿線一之江駅から小松川方面へと延びる今井街道沿いにポツリと佇む一軒の酒場が見えてくる。
紺色と赤、2つの暖簾が間口いっぱいに掲げられた佇まいからしていかにも昭和テイスト満載の酒場だ。
暖簾をくぐれば、そこは映画のセットのような昔ながらの酒場。

「オ、池波さん、久しぶり。酎ハイ?」

主人が声をかけた。

「うん、それと煮込み」

「はいよ」

下町酎ハイの焼酎は三重のキンミヤ焼酎、通称「亀甲宮」がお約束だが、ここはタカラ焼酎。

もちろん甲類。

近年の焼酎ブームは本格焼酎乙類で、これは結構なことだけど、酎ハイは甲類に限る。

合成アルコール甲類は味がないのでウーロン茶やレモン、はたまた梅干しを入れるが、ここはレモン汁を絞って、甘み「砂糖」を加えた氷無し。

慣れた手つきでたちまち届く。

クイー……。

アー、うまい。

私は大吟醸だ純米だ、芋だ黒糖だと酒にうるさいが、下町に来たらそんなヤボは言わない。

ずばり焼酎ハイボール、酎ハイ。

その店の酎ハイをがぶがぶ飲めばよいのだ。

この店は昭和30年代の雰囲気が残る。

居酒屋の居心地は建物とともにあり、古ければ古いほど良く、少し儲かってこの際きれいにしようなどと作り替えると、途端に客は離れてゆくものだ。

店を出てタクシーに手を上げた。

目指すは江戸川区最大の飲み屋街小岩。

私は20代のとき1年ほど小岩6丁目に住んでいたことがある、昔懐かしい、よく知った町だ。

当時通った居酒屋は小岩、総武線高架沿いの赤い大看板が目印の(浅草バー)。
浅草バーといっても浅草にあるバーというわけではない。
小岩にある非常に安い典型的な大衆居酒屋で数年前に閉店した。
仲間が来れば、とりあえず金ができたのだからたまには浅草バーに行ってチューハイでゲイ【鯨】カツでも食おう、となる。

さて酒の算段に入ろう。

何百回と歩いた高架下を小岩6丁目方面に歩いた。

小岩中央通り高架下にある(けやき)は当時からあった居酒屋だ。

今日はここへ入ろうと初めて暖簾をくぐった。

魚貝の品揃えがよい気楽な居酒屋である。

「燗酒と赤貝刺身ね!」
「へい」
届いた赤貝の盛りつけに目を見張る。
貝殻の上に大葉を枕にこんもりと盛り上げ貝の身をあしらう。
さあどうぞと怪しく濡れ光る赤貝に指で触れてみたい。
まさに大奥のお局。
手練手菅の熟女には殿もいちころだろう。
「ごくり」思わず生唾を飲む自分が恥ずかしい。
恐る恐るひと箸。
その舌触り、透明涼やかな甘味よ。
酒で口を洗い、次のひと箸はちらりと太股が見えたようなヒモ。
これがまた……。
いい加減にシロ!

自らに一喝して我に返る。

活きた赤貝になんだか疲れたみたいだ。

おすすめのナマコ酢はみっしりと歯応えがして、強い磯香とえぐ味が口中を満たす。
すかさず酒を含むと、あら不思議。
えぐ味はさらりと消え、再びナマコに箸が出る。
これこそ酒の肴の至福。
このときの酒はもちろん燗酒だ。
冷たいナマコと温かい酒の繰り返しが忘我の境にみちびく。
クイー……。

秋の夜。
妖艶な熟女と一杯やったのでした。

↑小岩の飲み屋のメイン通り「昭和通り商店街」は下町の生活商店街

↑夜のサンロードは昭和の下町風情が漂う

↑葛西海浜公園で遊ぶ親子たち

◆この記事を書いたひと

酒場ライター:居酒屋伝道師・池波和彦

 

東京生まれ東京育ち。酒場巡りを趣味とし、北は北海道の離島から南は沖縄の離島まで新規7000軒以上の店を巡りブログ「日本の酒場をゆく」を執筆。毎夜全国の居酒屋やバーにて神出鬼没の酒戦の日々を過ごす痛飲派。

 

ブログ「日本の酒場をゆく」↓

https://ameblo.jp/m458itmasa/

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。