下町酒場はしご酒~江戸川のディープな居酒屋巡り
生命の息吹を感じる初夏から盛夏
春の名残を風がさらい、青嵐が吹き抜けると、季節は一気に盛夏へと躍り出る。命の気配が濃くなり、乾いた喉が酒を欲する時分だ。
初夏の華といえば、なにはなくとも初カツオ。「女房を質に入れても」とはよく言ったもので、脂の軽い「もちカツオ」の赤い身を刺身でやれば、舌の上で季節が跳ねる。叩きにするにはまだ惜しい。時を同じくして出回る新子は、ごく僅かな旬を味わう江戸っ子の粋と見栄の真骨頂だ。
半夏生を過ぎれば、タコが脂をのせる。粗塩を少し振って噛みしめるのがいい。川からは鮎の便りが届く。品書きにその名を見つけたら、躊躇はいらない。若鮎が太らぬうちに塩焼きを頼み、蓼酢を添えて頭から骨ごと喰らう。
盆の足音が聞こえ始めれば枝豆の出番だ。塩ゆでにした緑を摘み、冷えた一杯で流し込む。スタミナをつけるなら鰻だが、なければ穴子の白焼きで充分。わさびを少し乗せれば酒が進む。
冷やした夏吟醸【最近は各社で「夏吟醸生酒」を売り出し、やや低アルコール】をグラスで煽れば、腹の底から落ちていく清涼感。夏の酒場は、旬の生命力をいただく場所だ。自分の体にその気を吹き込み、またひとつ季節を越えていく。
↑初カツオを土佐久礼の市場の食堂で
↑5月枕崎でぶえんカツオ
ぶえんカツオとは一本釣りで釣り上げたカツオを船内で生きたまま瞬間凍結し、新鮮な状態を保ったまま水揚げするカツオのこと。
↑富山県神通川産の若鮎を富山の酒場で
↑コハダの新子は江戸の粋
初夏の石岡の居酒屋で

◆この記事を書いたひと
酒場ライター:居酒屋伝道師・池波和彦
東京生まれ東京育ち。酒場巡りを趣味とし、北は北海道の離島から南は沖縄の離島まで新規9000軒以上の店を巡りブログ「日本の酒場をゆく」を執筆。毎夜全国の居酒屋やバーにて神出鬼没の酒戦の日々を過ごす痛飲派。
ブログ「日本の酒場をゆく」↓
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