下町酒場はしご酒~江戸川のディープな居酒屋巡り
夜のとばりに放たれる懐かしくも温かみのある昭和酒場の魅力
JR総武線平井駅北口を出て、ぶらぶら3分ほど歩き(丸木屋)のひなびた暖簾をくぐった。
店内は古く、年配のお母さんとその息子と二人でやっている。
料理は盛り付けが丁寧な割烹風だ。
酒飲みの定番刺身盛り合わせ、自家製ポン酢の赤なまこ酢、手作りの小あじ南蛮漬、さっぱりとしたうど酢みそ。
皆、下町酒場らしく強い味が明快でとてもうまい。
品書きに「新塩らっきょう」がある。
酒の肴で最もシブい品といえばらっきょうあたりはそうだろう。
暴れん坊の小倉の車引き・無法松は、敬愛する吉岡大佐未亡人の一子を男として鍛え、酒を飲みながら昔話をする。
そのときのつまみがらっきょうだ。
甘いのはいけない、あくまで塩漬。
居酒屋にはなかなか良いのがなかったが、(丸木屋)でみつけた。
透明なガラス小鉢に純白の新塩らっきょうが清楚に美しい。
新塩らっきょうはシャキっとした歯応えに、ツンと清潔な辛みが刺激し、そのあとの酒が甘くうまくなる。
これに「とちお揚焼」でもとれば練達の渋い酒飲みだ。
男はこういう渋い居酒屋で自由にふるまえる器量が必要だ。
なぜなら「酒に酔うとその人の本体が表れる」ゆえ、酔って表れた人間性に魅力があれば、それが本体と見えるからだ。
あの人を信頼する、あの人ならついてゆくというのは、つまるところ地位や家柄ではなく人間性だろう。
地位や家柄はなかなか得難いが人間性は自分で鍛えられる。
私は人間性を鍛えるためにひとりで居酒屋に入ることをすすめる。
最初は度胸がいるけれど「男は度胸」。
いざという時に度胸のある男は頼もしい人間だ。
友達と騒ぐような入りやすいチェーン居酒屋は避け、常連のいそうな目立たぬ入りにくい店をあえて選ぶ。
度胸試しだ。
戸を開けたらこちらを主人や客がじろりとにらむ。
ひるむな、こちらは客だ。
ひとりはカウンターがよいけれど、カウンターは主人と向き合うハレの場であり、はじめからそう緊張を課すこともない。
末席の目立たぬ所に座ろう。
最初にすることは注文。
「ビールください」。
これでいい。
居酒屋はお通しが出るから、これを相手にゆっくり品書きを眺め、肴を決める。
「まぐろ刺身と枝豆、ください」。
それが届いて箸をつける頃は「見慣れない奴が来たな」と見ていた常連も興味を失い、誰も注目しなくなる。
ここからようやく自分の世界だ。

↑この日はカンパチ、マグロ、シマアジ、サーモンなどが登場

↑刺身よりもラッキョーの清冽純情をとれ!

↑店の名物はお通し。これだけでもう何も要らない

↑古き良き昭和酒場の面影が魅力
| 店名 | 丸木屋 |
| 住所 | 東京都江戸川区平井5-28-11 |
| 営業時間 | 17:00~翌0:00 |
| 定休日 | 不定休 |
| 連絡先 | 03-3611-6614 |
| 関連サイト | なし |
| 取材日 | 2020年 |

◆この記事を書いたひと
酒場ライター:居酒屋伝道師・池波和彦
東京生まれ東京育ち。酒場巡りを趣味とし、北は北海道の離島から南は沖縄の離島まで新規7000軒以上の店を巡りブログ「日本の酒場をゆく」を執筆。毎夜全国の居酒屋やバーにて神出鬼没の酒戦の日々を過ごす痛飲派。
ブログ「日本の酒場をゆく」↓
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。
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