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下町酒場はしご酒~江戸川のディープな居酒屋巡り

池波和彦のまいぷれ江戸川区・魅惑の下町酒場#番外編・カツオ

この季節はカツオが旨い!!

江戸っ子はカツオでぃ!

目に青葉、山ほととぎす、初鰹。
来やがったな、この季節。
待ってましたと大向こうから声をかけたくなる。
鰹ってやつァ、まったく粋な縞の千両役者だ。
ひと皿出りゃ、座がぱっと明るくなる。

「江戸っ子だってねえ、鰹食いねえ」
「買う金がなけりゃ女房を質に入れねえ」
「うちの女房じゃ、質にも入らねえ」
「なんだい、それは!」
「へい、すみません」
威勢ばかりは一人前、だが気は小せえ。
そこがまた江戸っ子の愛嬌ってもんよ。

冗談はこのくらいにして、届いた鰹の刺身を見りゃ、誰だって居ずまいを正す。
鮮やかな赤身が、ぶ厚く五切れ。
薄っぺらじゃいけねえ。
鰹はこうでなくっちゃ面白くねえ。
ひと切れ頬張れば、舌にねっとり吸いついて、澄んだ旨味がすうっとひろがる。
この季節、東京の居酒屋は鰹さえあれば文句なし。
まずは一杯、それで景色がきまる。

ところが関西じゃ、これがそう騒ぎにならねえ。
関東は血の気が多いから、鰹だ鮪だと勇ましい方へ走る。
関西は口が肥えてるぶん、鯛だ鰆だと、品のいいところを好む。
土地が違や、魚の贔屓も違う。
それがまた面白え。

いまどきは、そこらの店先で買う鰹でも、当たりの品ならずいぶんうまい。
サクで手に入れたら、肝心かなめは切り方よ。
けちけち薄く引くんじゃねえ。
どんと厚くいく。
できりゃ二寸とは言わねえまでも、二センチほどにぶった切る。
皿の上で身が立つくらいで、ようやく鰹らしい面構えになる。

薬味は新玉葱がいい。
鰹って魚は、身の奥に血の気の旨さを抱えてる。
そこが身上だ。
だがそのぶん、間があくと匂いに出やすい。
だから世間じゃ、にんにくだの強い薬味だので押さえ込む。
それも悪かねえ。
だが、きちんと血抜きされた上物なら、むやみにごまかすにゃ及ばねえ。
いい漁師の魚は、上がってすぐの始末が違う。
そこでもう勝負の半分はついてる。

高知じゃ、焼いてたれにくぐらせるばかりが能じゃねえ。
近ごろは塩で食わせるたたきが幅をきかせてると案内されているし、塩たたきは高知の名物として観光情報でも紹介されている。
皮目だけを豪快に炙って、脂をじゅうじゅう言わせる。
すると、皮の際だけうっすら白くなって、芯の赤身はまだひんやりしてる。
あの加減がたまらねえ。

そこへ生にんにくをぶつ切りでばらっとやる。
ひと口でいけば、焦げた香り、赤身の野趣、にんにくの辛みが、いっぺんに押し寄せる。
上品ぶった魚じゃこうはいかねえ。
鰹は荒っぽくて、真っ正直で、どこまでも男前だ。

今夜は鰹で一杯。
こういう季節を逃しちゃ、野暮ってもんじゃないか。

↑左がカツオ刺身、右がカツオたたき

↑土佐久礼一本釣りのカツオ

↑ニンニクがワイルドでたまらない

↑珍しいマルソウダの新子(ソウダガツオ属)

◆この記事を書いたひと

酒場ライター:居酒屋伝道師・池波和彦

 

東京生まれ東京育ち。酒場巡りを趣味とし、北は北海道の離島から南は沖縄の離島まで新規8000軒以上の店を巡りブログ「日本の酒場をゆく」を執筆。毎夜全国の居酒屋やバーにて神出鬼没の酒戦の日々を過ごす痛飲派。

 

ブログ「日本の酒場をゆく」↓

https://ameblo.jp/m458itmasa/

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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