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下町酒場はしご酒~江戸川のディープな居酒屋巡り

池波和彦のまいぷれ江戸川区・居酒屋講座

まず最初に頼むべき一品

居酒屋の愉しみは肴にある。

冷えたビールをぐっと干し、出されたお通しに一箸つけ、「てはじめに、なにをやろうか」と品書きを検分する。このひと時がどうにも愛おしい。

酒を頼めばお通しがつくのは日本の矜持か。なかなか粋な制度である。むろんタダではないが、なにが出てくるかという期待と、主人のセンスを測る愉しみがある。

お通しは過不足なく、さりげないものがいい。注文した本陣が届くまでの「しのぎ」であり「あて」なのだから、野暮に量を盛ったり味が濃すぎたりしては興が醒める。以前、どこぞの店で座るなり唐揚げを出された折りは、その野暮天さに閉口した。あからさまな残り物も興ざめだ。食欲をそそるよう、ごく軽く酢を効かせるあたりに主人の腕が出る。

ねぎぬた、旬のおひたし、ワカメと茗荷の三杯酢、あるいは磯つぶ貝の浅炊き。こういう皿がすっと出されれば、思わず頬が緩む。ただ、自慢の自家製塩辛をお通しに突っ込んでくるのは行き過ぎだ。塩辛は店の看板を背負う逸品。少量安価でよいから、きちんとお金を取って出さねば酒にも失礼というものだろう。

そのお通しを突つきつつ、品書きと対峙する。顎を撫でて思案した末、やはり刺身から入るのが筋というものだ。「まず初手の一品」は、旬の生ものに限る。

腰を据えてやるならば、こうだ。 アジのたたきで口火を切り、サンマの塩焼きへ。合間にグリーンサラダを挟み、カレイの煮付けか牛スジ煮込みで深みへ導く。腹の具合を見て、締めにはお茶漬けか香ばしい焼きおにぎり。傍らには自家製塩辛とおひたしを常備しておく。

「あっさり」から「濃い口」への流れに野菜を添え、栄養の釣合いにも気を配る。一見して考え抜かれたこの陣形——「勝手にしろ」とお叱りを受けるかもしれないが、居酒屋の肴とはこういったものだ。

家庭の惣菜を基調に、旬の味を合わせ、気取らず安直を旨とする。

その真髄は、どこにでもある大衆食材に「ひと手間の仕事」を施すところにある。家庭の味でありながら、決して家庭では真似のできぬプロの矜持を見せる。最高級のマグロを自慢し、切り分けて出すだけの高級店は料理としては楽なものだ。安価な赤身にさっと包丁を入れ、ぬたに仕立てて酒飲みの腑に落とす。これこそが、居酒屋の本当の本領というやつである。

↑焦げ風味でアクセントをつけるのもいい。蛸串焼き

↑まず最初に頼むべき一品は旬の刺身か盛り合わせだ

↑箸休めには酢のものが良い。クラゲ酢

↑自家製の塩辛があれば絶対注文を

◆この記事を書いたひと

酒場ライター:居酒屋伝道師・池波和彦

 

東京生まれ東京育ち。酒場巡りを趣味とし、北は北海道の離島から南は沖縄の離島まで新規9000軒以上の店を巡りブログ「日本の酒場をゆく」を執筆。毎夜全国の居酒屋やバーにて神出鬼没の酒戦の日々を過ごす痛飲派。

 

ブログ「日本の酒場をゆく」↓

https://ameblo.jp/m458itmasa/

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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