荒川、江戸川、東京湾に三方を囲まれ、区域の7割が海抜ゼロメートルの江戸川区。
「ここにいてはダメです」というショッキングなフレーズで広域避難(より安全な区外に避難すること)の重要性を訴えたハザードマップを見て、もっとも身近な災害である水害に危機感をお持ちの方は多いことでしょう。
青森大学東京キャンパス(江戸川区清新町2-10-1)で防災や医療など様々なリスクの研究に携わる久保英也教授(総合経営学部)は
「江戸川区は日本で一番、いや世界で一番リスクが高い場所」だと言います。
今回は、水害時江戸川区で何が起こるのか、そしてそれに備える「高規格避難所」の必要性についてお伝えします。
■:目次
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1.江戸川区の水害リスクと避難対策(本記事)
2.高規格避難所とは・炊き出し
3.避難所運営をシミュレーション「HUGゲーム」
4.災害関連死を抑制する高規格避難所の設備展示
■:荒川と江戸川が氾濫!その時どうなる?
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大雨や台風で荒川と江戸川が同時に氾濫!
その時には、江戸川区の約9割が浸水。2〜4メートルの浸水が2週間続く可能性も示唆されています。
浸水したら区内の避難所へ…と考えますが、当然
避難所もその多くが浸水しています。
マンションなど、高層階に住んでいる人は浸水の直接的な被害は免れますが、ライフラインが途絶えて水も冷房も使えない環境下で、自宅に備えた物資で長期間耐えなければなりません。
こういった状況から、行政はいち早い広域避難の必要性を訴えています。
■:広域避難の難しさ
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しかし、現実は厳しいものです。久保教授によると、
区外に安全な避難先を確保できている人は区民の30%弱と言います。
さらに江戸川区は2本の川に挟まれた特殊なエリア。区外へ移動できる橋はたったの8本、しかも緊急時には地下鉄が止まり、道路は緊急車両専用になります。70万人が一斉に移動するのはほぼ不可能。さらに台風や線状降水帯は直前まで予測が難しいため「逃げるべきタイミングを見極めるのも大きな課題だ」と教授は指摘します。
■:「浸水しない」清新町・臨海町に人が殺到
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そんな中、
江戸川区で唯一浸水しないエリアが清新町、臨海町です。
つまり、水害時に広域避難できず、また垂直避難(3階以上の上層階に避難すること)もできない江戸川区中の人たちが、
清新町や臨海町の避難所に殺到することが想定されます。
その数は、江戸川区南部に限っても約2.5万人。一方、現状清新町・臨海町の避難所の最大収容人数は1,500名程度です。
この状況を重く見て、江戸川区清新町にキャンパスを置く青森大学東京キャンパスが中心となり、区や自治会と協力しながら対策を取り始めました。
■:見逃せない「災害関連死」
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水害発生時の清新町・臨海町の避難所は、混乱を極めることが予想されます。そんな状況下で久保教授が強く懸念するのは、避難生活中の
災害関連死です。
「熊本地震では、地震による死者・行方不明者が50名だったのに対し、避難生活中に亡くなった災害関連死は223名にものぼりました」と深刻な事例を挙げながら、日本における避難生活の過酷さを訴えます。
床に敷かれたブルーシートに直接寝転がり、目を開ければ隣には見ず知らずの他人が見える生活。想像を絶するほど汚いトイレに行きたくなくて、水分や食事を控える人も増えると言います。こういった長期間の避難生活によるストレスや体調悪化は、特に高齢者にとって命取りになることも。江戸川区でも、同じような事態が十分に想定されると教授は警鐘を鳴らします。
■:高規格避難所の必要性
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こうした状況を改善するために期待されているのが
「高規格避難所」です。
プライバシーを確保できる避難用室内テントや、避難者の属性に応じたゾーニング。清潔なトイレや入浴施設といったハード面はもちろんのこと、女性や高齢者、乳幼児、障害、難病、アレルギー、LGBTQ、外国人…多様な利用者へ個別対応できるソフト面にも配慮が重要となります。
ただ「身を寄せ合うだけの避難所」ではなく、環境を整え、少しでも心身の負担を軽減すること。それが、災害関連死を減らすために必要な対策なのです。
2025年3月16日(日)、青森大学東京キャンパスにおいて、実際に高規格避難所の開設訓練が行われました。
実際に避難所を運営する地域の方々が、具体的に体を動かして避難所を開設するまでの動きを体験する訓練です。
次の記事では、この開設訓練の様子をお伝えします。