荒川、江戸川、東京湾に三方を囲まれ、区域の7割が海抜ゼロメートルの江戸川区。
「ここにいてはダメです」というショッキングなフレーズで広域避難(より安全な区外に避難すること)の重要性を訴えたハザードマップを見て、もっとも身近な災害である水害に危機感をお持ちの方は多いことでしょう。
今回は、
2025年3月16日、青森大学東京キャンパス(江戸川区清新町)で開催された「高規格避難所開設訓練」をレポートします。(
最初から読む方はこちら)
■:目次
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1.江戸川区の水害リスクと避難対策
2.高規格避難所とは・炊き出し
3.避難所運営をシミュレーション「HUGゲーム」
4.災害関連死を抑制する高規格避難所の設備展示(本記事)
■:大規模水害で、清新町の避難所
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江戸川区で大規模な水害が起こると、
区内の9割が浸水する。
広域避難(区外に避難すること)が前提ではあるが、
さまざまな要因で避難できない方が一定数いる。
「江戸川区南部で唯一浸水しない」清新町の避難所には、収容キャパシティを超えた人数が殺到する。
これが、今回の避難所開設訓練を、清新町にある青森大学東京キャンパスが行った理由です。
日本の一般的な避難所は、床にブルーシートを敷いて直接寝ころがる雑魚寝方式。
目を開ければ、すぐそこに知らない人の顔があるような環境です。
長期間の避難で蓄積するストレスや、思うように体を動かせない状況は、
災害関連死の増加につながります。
「災害から逃れられたのに、避難所の環境が原因で命を落とす人を減らしたい」
そんな思いで、地域と連携しながらリスク研究を行う久保英也教授(青森大学東京キャンパス)により、今回の訓練は行われています。
訓練の最後はいよいよ、
よりストレスのすくない「高規格避難所」の見学です。
青森大学東京キャンパスの体育館に進みます。
■:受付の快適さでストレスは軽減する
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「実は避難所運営は受付がとても大切なんです」と久保教授は言います。
現在、国内の避難所では、受付時に紙の「避難者カード」に世帯情報を書き込むのが一般的です。
書き込むのにかなり時間がかかるので、受付には長い列ができます。
ようやく避難所にたどり着いたのに、入るまでに長時間待たなければならない。
この
入所時のストレスが、後の避難所生活に対する悪い印象にも繋がっていくそうです。
逆に受付がスムーズだと、避難所で感じるストレスも減ると言えます。
そこで、青森大学東京キャンパスでは、
インターネットを使った受付システムを開発。
それぞれのスマートフォン端末でQRコードを読み取り、簡単なボタンをタッチして属性や個人情報を登録すると、自動的に最適なエリアに割り振られる仕組みです。
スマートフォンを持っていない方は、設置されたタブレット端末で登録。運転免許証をスキャンして情報を取り込み、入力時間を短縮する工夫もされていました。
前記事のHUGでの検証で、避難所運営には名簿が欠かせないというお話を聞きました。
受付を電子化することで、
自動的に名簿が作成され、簡単に検索できるというメリットもあります。
情報を保存するストレージデバイスや、Wi-Fi設備と共に避難所に保管しておけば、いざというときにすぐに使えるシステムです。
■:プライバシーを確保する避難時用テント
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2024年の台湾地震の際、花蓮市の避難所で整然と並べられていた避難所用室内テント。
その1つが見本として展示されていました。
実際に花蓮市の避難所でも活躍した台湾の慈善団体「仏教慈済慈善事業基金会」の提供です。
中は広々としていて、大人3人が過ごすことができます。
何より驚いたのは、
ベッドがあること!
床から高さのあるベッドなら、就寝時に埃を吸い込むこともありません。
また、
高齢者も立ち上がりやすいのでトイレを我慢することもなく、体を動かす習慣作りにも繋がります。
■:女性や子どもに配慮した避難所
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広い通路でエリアが区切られた避難所内。
一般エリアのほかに、女性専用エリア、乳幼児エリアなどがありました。
子どもが過ごすエリアには、
遊び場やおもちゃも設置。
できるだけ普段と変わらぬ環境で、ストレスを減らす工夫がされていました。
また、
女性用のパウダールームに生理用品や乳児用のおむつが豊富に用意されていたのも印象的でした。
■:避難所の清潔環境を保つ仕組み
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民間企業による最新鋭の設備も展示されていました。
例えば、
排水の98%をその場で再生循環する「WOTA」。
100Lの水で約100回シャワーが浴びられるこのシステムは、
避難所の「お風呂に入れない」問題を解決してくれます。
災害時の食事はサンドイッチやおにぎりなど手づかみで食べるものが多いのですが、このシステムを導入すれば水資源を無駄にせず、きれいな水で手洗いができるそうです。
■:さまざまな人の事情に配慮した準備
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多くの人が避難してくるということは、さまざまな事情を抱えた人が集まるということでもあります。
その事情にていねいに寄り添う姿勢が印象的な避難所でした。
例えば食料の備蓄品。アルファ米やクラッカーなど一般的な食料に加え、アレルゲンフリーの缶詰も用意されていました。
重いアレルギーを持つ方にとって、避難所での食事は「食べることも、食べないことも死活問題」という状況になり得るというお話を聞き、重要性を改めて感じました。
■:まとめ
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海抜ゼロメートル地帯に位置し、甚大な水害リスクを抱える江戸川区では、避難生活の質を高める取り組みが急務です。
多様な背景を持つ避難者に配慮した空間づくりや、スムーズな受け入れ体制の構築は、災害関連死を減らすための鍵となります。
また、実践的な訓練を通じて、地域住民が避難所開設・運営の現実を知ることは、自助・共助の意識を育む第一歩です。
防災は「もしも」ではなく「いつか」の問題。
命を守る備えを普段の生活から意識することが大切だということを深く知ることができた1日でした。