下町酒場はしご酒~江戸川のディープな居酒屋巡り
江戸川の居酒屋で貝を味わう
暖かくなると家の外へ、居酒屋へ出たくなる。
初夏の便りはまず「貝」から。アワビが殿ならトコブシは家老。勘定奉行ホタテは廻船問屋ホッキ貝と怪しい。腰元ハマグリの腰つき色っぽく、新入りお女中トリガイは何かと頬を染める。
バカな想像をしていたら一杯やりたくなり京成小岩の居酒屋へ。「いらっしゃい」白衣に銀髪の主人が迎えてくれた。おしぼりを使いながらまずは大阪の名酒「秋鹿」の燗を注文。
目の前のガラスケースには魚が詰まり、さあ刺身にしてくれと訴えている。ホウボウにカレイ、アオリイカにアジ……。上品な筆字の品書巻紙を読んでゆく。おお、あったあった。「赤貝!」
「はいよ」届いた赤貝の盛りつけに目を見張る。放射状の白い節目に沿い、びっしりと黒毛が毛深く生え揃う大ぶりの殻を、ぱっくり開いて縦置きし、中に貝肉を茗荷を枕にこんもりと盛り上げ、穂じそを一輪あしらう。さあどうぞと濡れ光る貝肉に触れてみたい。まさに大奥のお局。手練手管の熟女には殿もいちころだろう。「ごくり」思わず生唾を飲む自分が恥ずかしい。
恐る恐るひと箸。そのぴちぴちした舌触り、むっちりした弾力、官能をくすぐる匂いよ、透明涼やかな甘味よ。酒で口を洗い、次のひと箸はお色気たっぷりのヒモ。これがまた……。いい加減にシロ!自らに一喝して我に返る。
初夏の夜。妖艶な赤貝で一杯やったのでした。

↑妖艶な赤貝刺身
↑貝の盛り合わせ
↑赤貝表記だが、これはサトウガイ(偽の赤貝)。回転寿司のアカガイはみなこれ
↑牡蠣はレモンが一番

◆この記事を書いたひと
酒場ライター:居酒屋伝道師・池波和彦
東京生まれ東京育ち。酒場巡りを趣味とし、北は北海道の離島から南は沖縄の離島まで新規8000軒以上の店を巡りブログ「日本の酒場をゆく」を執筆。毎夜全国の居酒屋やバーにて神出鬼没の酒戦の日々を過ごす痛飲派。
ブログ「日本の酒場をゆく」↓
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