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下町酒場はしご酒~江戸川のディープな居酒屋巡り

池波和彦のまいぷれ江戸川区・日本酒の話

新酒と古酒

大吟醸や純米酒といった酒の種類を横の物差しとするなら、もうひとつ、縦に通る物差しがある。
それが歳月による熟成である。

日本酒はおおむね晩秋から仕込みが始まり、年を越え、春先には最初のしぼりである新酒が生まれる。
なかでも「あらばしり」は、若さそのものを思わせる荒々しさと、はじけるような生気を宿している。

その酒がひと夏を越えると、角はやわらぎ、味わいに落ち着きが出る。
やがて秋を迎えるころには、旨みがふくらみ、いわゆる「秋上がり」として飲み頃に入る。
秋に旨みを増した酒を秋上がりと呼ぶことや、十月一日が日本酒の日とされている。

この季節は、海のものも山のものも実りを見せ、酒もまた燗の似合う顔つきになる。
肴よし、酒よし、まさに盃の深まる折である。
そうしてその年の酒を味わい尽くせば、また新たな米が実り、蔵は次の仕込みへ入ってゆく。
日本酒とは、つまるところ四季の歩みに寄り添って生きる酒なのだ。

秋上がりは、とりわけ旨みがのり、円みと奥行きをたたえる。
若さの鮮烈さとは別の、成熟のよさがそこにある。

もっとも、すべての酒が一年で飲み尽くされるわけではない。
なかには二年、三年と時を重ね、古酒として別の貌をあらわすものもある。

かつては課税の仕組みの都合もあって、酒は早く売るほど都合がよい時代があった。
だが環境が変わるにつれ、蔵に置かれた酒のなかから、歳月によっていっそう味わいを深めるものが見いだされていった。
そうして長期熟成という世界が、狙って造るものとしても意識されるようになったのだ。
熟成によって香味が変わり、秋の熟成酒や長期熟成酒が楽しまれている。

とはいえ、長い時間をかければ必ず報われるわけではない。
どの酒を、どの温度で、どのように眠らせるか。
その見極めはいまなお蔵ごとの経験と工夫に委ねられている。
まさに、時を仕込む仕事である。

古酒の妙はまことに幅広い。
琥珀を思わせる色を帯びるものもあれば、異国の醸造酒を思わせる香りをまとうものもある。
あるいは、コクを深め、重みと余韻を静かに積み上げるものもある。
酒そのものの素性と、置かれた時間の重なりとが、一本ごとに違う表情を生む。

時間を味方につける酒造りは、手間も覚悟も要る。
それだけに、見事に熟した酒には、それ相応の値打ちが宿る。
これからの日本酒は、ただ新しさを競うだけではない。
どの年に生まれ、どのように歳月をくぐったか。
そんな来歴までも盃のうちに味わう、そんな時代へ入っていくのかもしれない。

↑島根・王禄、山形・十四代・秋田・新政の飲み比べ

↑今いちおしの地酒 秋田の美酒の設計 この雪の茅舎の限定酒を居酒屋で見かけたら迷わず注文せよ

↑秋田の飛良泉も根強い人気

↑これから流行るであろう秋田の春霞

 

店名薫酒や いこう商店
住所東京都江戸川区平井5-16-2
営業時間11:00~22:00
定休日

火曜

連絡先03-6682-3892
関連サイトhttps://edogawa.mypl.net/article/sakaba-hashigo_edogawa/81110
取材日年

 

◆この記事を書いたひと

酒場ライター:居酒屋伝道師・池波和彦

 

東京生まれ東京育ち。酒場巡りを趣味とし、北は北海道の離島から南は沖縄の離島まで新規8000軒以上の店を巡りブログ「日本の酒場をゆく」を執筆。毎夜全国の居酒屋やバーにて神出鬼没の酒戦の日々を過ごす痛飲派。

 

ブログ「日本の酒場をゆく」↓

https://ameblo.jp/m458itmasa/

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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